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日本の花火を代表するのが菊。そして、この菊こそ世界で最も華麗で精巧な花火なのではないでしょうか。上空高く花火が開くと星(光や色彩、煙を出す球形の火薬)が尾を引きながら四方に飛び散り、菊花の紋を描きます。菊は一つの円(球)ではなく、芯物といって二重・三重・四重の同心円を描きます。三重を八重芯物、四重を三重芯物といい、最近では五重芯まで登場していますが、これらの芯入花火は二重・三重に星を並べて作るため、配色や星の大小などを考えて丁寧に配列することが必要です。同じ八重芯でも個人差があり、また同じ人が作っても全く同じものにはなりません。名人といわれた故・青木多門氏は「一年に二百以上作る尺(十号)玉で、自分が満足できるものは三つか四つだ」と言われました。 |
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光の帯がゆっくりと夜空から流れ落ちる雄大さ。最近の花火大会の有終の美を飾ることが多いのがこの冠菊。昔は禿菊と書いたそうです。江戸時代、遊女に仕えた女の子の髪型に似ていたことからなのですが、最近ではさらに華やかになり、王冠に見立てて冠菊と記すことが多くなりました。すぐに消えずに、花弁が垂れ下がってゆくそのさまは大柳とも呼ばれ、江戸時代は暗い色が好まれたようですが、最近ではキラキラと残る錦や銀色に輝くものなど、明るい色も登場しています。夜空を覆う冠菊は、大きな玉になればなるほど圧倒的な迫力を持ち、観衆をわかせます。暗い夜空をバックに、中央の丸い芯菊と垂れ下がってゆく光跡の明暗の妙こそ、花火の醍醐味なのではないでしょうか。 |
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色とりどりの美しい小花が一斉に開き、夜空に花園が浮かび上がる‥‥。日本の花火界に千輪が登場したのは、大正時代中期のことでした。ドーンと響いて夜空に無数の小花が咲き乱れる千輪の美しさは、たちまち観衆の心を魅了しました。当初は単色のみでしたが、今では多彩になり、彩色千輪や二度咲き千輪も見られるようになりました。千輪は一つの玉の中にたくさんの小玉を入れて作るため、容積の小さい三号玉以下では作れず、通常は尺玉で二寸大(径6〜7センチ)の小玉が32個、20号玉になるとその小玉の数は約80個にものぼります。千輪物においても次々と新しい試みがなされ、夜空に無数の蝶が舞う様子や、かわいらしいリボンが飛び交うといった作品も見られるようになりました。 |
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夜空を金色に染める椰子は、その大胆な美しさに定評があります。椰子は昭和50年頃、故・青木多門氏によって開発された比較的新しい花火です。椰子に使われているチタン合金は、人工衛星やロケットの胴体などに用いられている金属なのですが、これで作られた抜き星を八方に飛ばすと、太く長い花弁を作り、残像を長い間残します。この特徴を活かし、南国の風にそよぐ椰子の葉の様子が表現されています。当初は「金椰子」のみでしたが、「銀椰子」「色椰子」と工夫が重ねられ、バリバリと音を出しながら開く「バリ椰子」というにぎやかなものまで登場し、今ではスターマインの構成にも欠かせない花火となっています。 |
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まん丸い花火に見なれて来ると違ったものが見たくなる、調和美だけでは満足できなくなり、何か変化が欲しくなって来る‥‥そんな声に応えて登場したのが型物でした。型物は球形には開かず、魚・蝶・ハート形などの絵柄、または文字などを夜空に描き出します。ただ、型物には致命的な欠点があります。基本的に平面で見せる具象的な形を描くため、鑑賞する位置、角度によっては花火師が意図する形に見えず、見る人の想像力にまかせることになってしまうことです。しかし、それでも型物人気は衰えることを知らず、当地大曲をはじめ、全国各地の花火大会でさまざまな型物が見られます。なかでも、蝶が夜空を舞う姿は型物花火の定番であり、多くの花火ファンをわかせています。 |
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今や花火大会の主役は連発となりました。何十、何百、何千といった花火玉を短時間のうちにテンポ良く連続して打ち上げます。果てしない夜空をスクリーンにくりひろげられるその光景は実に圧巻。観衆に息つく暇を与えないほどに次から次へと光の花が咲き乱れます。花火は光と色と音、そして「間」の芸術といわれていますが、それらが一体となったのがスターマインです。与えられた時間の中で緩急自在・起承転結の妙を持たせ、いかにダイナミックに「魅せる」か‥‥その出来栄えは、花火師の力量にかかっているといっても決して過言ではありません。その難しさが多くの花火師たちの創作意欲を刺激し続け、素晴らしいスターマインが生まれています。 |
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夕刻から行われる昼花火は全国でも貴重であり、今日、競技会としては大曲でしか見られなくなりました。昼の花火では音ばかりではなく、七色の煙と光が楽しめます。また、パラシュートに吊る花火も明るい昼だからこそ‥‥というものもあり、昼花火の楽しみ方は多種多様。夜と違って、昼の空の色は様々であり、天気の状況によってもその効果は大きく変わります。晴天の青空では白い煙も冴えますが、どんよりとした曇り空では見えません。反対に、黒い煙菊や黄菊はくっきりと浮かび上がります。また、煙はすぐには消えず、空を漂います。風の向き・強さによって、大空のキャンバスには花火師の意図しない絵が描かれます。そこに夜の花火とは違った趣があるのです。

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大曲の花火
文と構成/LDT(秋田県大仙市)
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